PEOPLE
2018.10.31 2018 AUTUMN & WINTER ISSUE 掲載

石川さゆりの通勤ミュージック。

OWN MUSIC~通勤電車で聴く音楽~

音楽は自由。時代を流れる風のようなもの

ブルースのレジェンドに都々逸(どどいつ)にロッキー!?

意外だったのは、コム デ ギャルソンにコンバースというモードなファッション。

「いつも着物のイメージですが、お洋服も好きなんです」

鈴を転がすような声でにこやかに話し始めると、最新曲のタイトル「花が咲いている」のように場
が華やぎます。
ここ数年、椎名林檎さんや、奥田民生さん、亀田誠治さんなど、ジャンルを超えたアーティストと
のコラボレーションで注目される石川さゆりさん。昨年、歌手生活45年を超え、ますます勢いがある印象です。

「音楽は自由です。空気のように境目がなくて、時代の中を流れる風のようなものだと思います。いつも歌で、今みなさんに何をお届けするべきかと考えています」

一方で、石川さん自身が音楽を受け止めるときは、とてもストイック。

「資料として音楽を聴くことが多いですね。この人、素敵と思ったら、関係するアーティストやジャンルを次々と調べて、気付けば夜が明けていることもあります。明日があるんだからって思っても、つい聴いてしまいます」

音楽への探究心は部屋を飛び出して、ときには海を越えていくことも。

「ニューヨークのライブハウスを訪れたときは、『今日みんなに会えて幸せだよ〜』なんてMCしながら円熟のブルースハープを披露している方がいて、後から大御所のジェイムズ・コットンと知ってびっくりしました。アーティストとの距離が近いライブハウスで、彼の人生に触れてあったかくなれた。音楽は面白いと思えた経験の一つです」

そして通勤電車で聴こえてきたら、二度見してしまいそうな都々逸も、石川さんのおすすめの音楽です。

「プッと吹き出す話があったり、色っぽい話があったり、日本人の暮らしが垣間見えるところが面白いですね。伝統芸能が好きで、四国のこんぴら歌舞伎や都内の演芸場に観に行くこともあります。何かしら音楽のヒントを得ることもあるし、自分の楽しみとしてゴックンと呑み込んで終わりの場合もあります」

フットワークが軽く好奇心も旺盛。そんな行動力が素敵な人生の先輩にとって、40代はどのような時期だったのでしょうか。

「何もわからない頃と違って分かることが多いから、悩みは多かったですね。でもまだとんがっているし、エネルギーもある。無理がいっぱいできる時期です。私はやらずに後悔したくない派。みなさんも私なんてと言い訳せず、動くことで何かが生まれることはあると思いますよ」

がんばる人に寄り添う応援歌

 

「花が咲いている」
編曲は亀田誠治、作詞・作曲はいきものがかりの水野良樹による話題作。「まじめにがんばる人たちを応援したい、ほっとしてもらいたい。そんな想いを込めた最新曲です」

テイチクエンタテインメント
1204 円

 

Sayuri’s Recommendation(石川さゆりさんのおすすめ)

ジェイムズ・コットン 「 コットン・マウス・マン」
ニューヨークで偶然出会ったブルース界のレジェンド。巨体を揺らしながら、ブルースハープを吹き鳴らして歌う姿に「年輪を感じさせつつも、
全く気負いがない。音楽の面白さを改めて実感しました」
P-VINE RECORDS
2300 円

 

“ 柳家三亀松の都都逸”
戦中戦後に活躍した三味線漫談家の都都逸。取材中、お手持ちのタブレットで聴かせてくださった石川さん。「聴いていると納得することが多いんです。昔の日本人って面白かったんだと嬉しくなります」
「 今夜は帰さない」
キングレコード 現在廃盤

 

“ ロッキーのテーマ”
階段シーンで登場したフィラデルフィア美術館は、友人の矢野顕子さんと訪れたことも。「現地の人が記念撮影してくれたんですが、1ドル頂戴って言われて唖然。ここはアメリカなのよって矢野さんに突っ込まれました(笑)」

 

PROFILE
石川さゆり  Sayuri Ishikawa
1958年熊本県生まれ。1973年のデビュー以降、「津軽海峡・冬景色」「天城越え」などヒット多数で日本レコード大賞の常連に。宮沢和史や岸田 繁、奥田民生、椎名林檎との出会いから生まれた「X-Cross-」シリーズも好評。

 

Interview & text:Mikiko Manaka