PEOPLE
2018 OWN AUTUMN & SPRING

大和証券グループ本社 広報部長 竹内由紀子さんインタビュー

数字を伸ばすマーケット業務から、数字では表せない未知なる広報の世界へ

 

相場の前では非力。どん底も経験した勝負師時代

重厚な応接室に柔らかな空気をまとって現れた竹内由紀子さん。紺の濃淡でまとめた装いを引き立てる、ターコイズブルーのパンプスをお見せできないのが残念。

「スタンフォード大学経営大学院での2カ月間の短期留学から戻ったばかり。広報部長になる前から留学は決まっていたので実質的な稼働は帰国後の8月からですね」

子どもの頃、サンティアゴとメキシコシティに9年暮らした帰国子女で、スペイン語と英語を操るトリリンガル。グローバルな経験は現職にふさわしいものに思えるが、肩書きは長らく証券会社の花形であるディーラーだった。

1989年に旧三和銀行に入行してまもなくディーラーの道へ。欧州系金融会社を経て、

大和証券入社は2006年。「ディーラーは目標額が大きいので失敗すれば損失も大きいチームの損失分を計上すると莫大な額になりますから、少額でも勝ち続けなければいけません。ただ、入社以来、ほぼこの道一筋だったのでプレッシャーは慣れ。手を尽くしても相場の前では非力で、どん底に落ちることもありましたが、ディーリングルームを出ればふっと忘れてしまうんです」

一日に数億円の値振れがあっても弁解の余地はない勝負の世界で、切り替えの早さはプラスになる。ディーラー歴は20年を超えて、国債ディーラーのトップも務めた。

気持ちを上向きにするのは、磨き上げた10センチヒール

勝負師の素顔は、その笑顔のように穏やかだ。

「異業種の友達と美味しいものを食べに行ったりもしますが、一人のときは散策が好き。出張先の海外では、街行く人をファッションチェック。そのままお手本にするのは難しいので、着こなしのエッセンスを取り入れたりします」

日々の仕事服では心掛けていることがある。

「夜に会食やパーティーが控えている日は、夜を意識した少しドレッシーな装いで出勤。仕事中はジャケットにシワがつかないようハンガーに掛けて、代わりにカーディガンを羽織ったりします。大切なのは綺麗かつ清潔な服装で、相手へのリスペクトを意思表示すること。シワシワの普段着や、明らかに流行遅れな10 年前の靴では申し訳ない。私は大ぶりのジュエリーで、華やぎをトッピングすることもあります。とはいえ、金融機関ですし、広報業務は黒子役なので目立ってはいけませんが、その匙加減が楽しいところでもありますね」

なかでも一家言あるのが靴。

「いつも8〜10㎝ヒールのパンプスを愛用しています。ダッシュもできますよ(笑)。最近、遅ればせながらラクチンなペタンコ靴に開眼したんですが、やはりハイヒールは気分が上がりますね。靴磨きは子どもの頃からの習慣。汚れに無頓着な部下には磨いたほうが気持ちいいよとアドバイスすることも。第一印象でマイナス評価を受けてもつまらないですから」

部下の身嗜みにも気を遣う。それは管理職である自分自身のためでもある。

「2年前、初めて部長職に就いたとき、管理職の仕事は部下の評価を上げていくことだと気付きました。どれほどのスパンでキャリアを形成させるのか、そのためには今どんな研修を受けるべきか。要は水先案内人ですよね。各々の評価を上に上に導いていけば、組織のパフォーマンスを最大限に発揮できる。そして自分を含めた組織全体のキャリアアップにつなげることができます。仕事は自分一人ではできないから、その道のプロである部下にはのびのび仕事をしてもらい、成長を手助けしていきたいと考えています」

実は素材フェチ。「リネンやコットンなど、肌触りがよくて自宅で洗える天然素材が好きです」

求められている役割。それこそが今の天職

どうやら周囲には楽しそうに働いているように見えるらしい。だが、自分では「結構、大変なんだけどなあ」と思うこともある。

「広報は全く未知の分野で当初は驚き、不安を抱きました。でも好きな仕事を続けてこられた私は、恵まれていると思いました。だからこそ今、求められている役割を自覚して一生懸命がんばってみよう、そうすれば、自ずと道は拓けるはずという考えに至ったんです。今では新しい部署に配属してくれた方々に感謝ですね」

ディーラーから広報へ。キャリアの第二幕は始まったばかり。

「今後は会社のブランド価値が高まることをしていきたいですね。今まではマーケットが好き。でも一年後には広報の仕事が好きと言えるようになっていたいです」

【 心に響く! 竹内語録 】

■シワや汚れのない綺麗で清潔な服装は、相手へのリスペクト。

■服装で、スタート地点からマイナス評価を受けるなんてもったいない。

■気持ちを上げたいときは、ペタンコ靴よりも8 ~ 10cmのハイヒール。

■部下を上に導いていけば、自分を含めた組織全体のキャリアアップになる。

■今、求められている役割を自覚して、精一杯がんばる。

大ぶりのジュエリーにApple Watchが好相性。「新しもの好き。Appleの新製品は必ず試します」

 

PROFILE

Yukiko Takeuchi

1966年、神奈川県生まれ。1989年に国際基督教大学卒業後、旧三和銀行に入行し、営業を経てマーケット業務に携わる。欧州系金融会社、大和証券を含めディーラー歴は20年以上。今年4月より現職。趣味はお芝居やプッチーニ鑑賞だが、目下ゴルフ修行中。

 

photo:Natsuko Okada text:Mikiko Manaka