阿川佐和子さんインタビュー【最終回】

2017.12.22  2017 AUTUMN & WINTER ISSUE 掲載

“結婚? この人といると悩みが半減する、そういう存在がいることはいいこと。
楽しいことはもちろん、辛いことも分けあえる。(夫は)お皿も洗ってくれます(笑)”

結婚し、文句は増えているけど、悩みは半減している

──今年の5月にご結婚され、ご主人とお二人の生活になって新たな人生の楽しみが増えた阿川さん。結婚生活はどうですか?

「文句は増えているかもしれないけど、悩みは増えてない。半減してるかな。(夫は)焦ってもしょうがない、何とかなるんじゃないのっていうタイプだから、イライラしやすいこの性格が、横から冷静に見られている感覚がある。キーッとなっている時にふと、〝私だけが道化みたいだな〞と思わせる存在でいてくれるのでありがたいです。―って惚の ろ気け を言ってどーすんだ(笑)。

身近な人でなくても、〝この人といると悩みが半減する〞という存在がいることはいいことだと思います。ボーイフレンドでも女友達でもいいから、楽しいことはもちろんだけど、辛いことも分けあえて、第三の目になってくれる人を探してみてはどうでしょう。その相手が一人だけだと、その人ばかりに救いを求めてしまって、相手の負担になってしまうので、何人かいるといいんじゃないかな」

──ご主人は、「親の介護のほか、私が忙しい!とバタバタしていると、頼んでいないのにお皿を洗ったり、洗濯したり」してくれるのだそう。でも、「最初の頃は黒いものも白いものも全部一緒に洗うから、私の白いシャツとあちらの白いパンツがグレーになったりもしました。『微妙だけど洒落た色だね』なんて言って、そのまま着てますけどね(笑)」と、吝嗇エピソードにも幸せがいっぱいです。そんな阿川さんの吝嗇ライフが、ご主人の価値観とぶつかることはないのでしょうか。

「私のケチ感覚については『よくわからない』と言われていて、そこは摺り合わせ中です。でも、摺り合わせが必要なことは本当にいーっぱいある。なんだけど、なんとなく摺り合わさってくるんです。最初の頃なんて全ての好みが合わないと思っていましたからね。私は黒胡椒が好きだけど、あちらは白胡椒が好きだし。目玉焼きの焼き方、洗剤の濃度の違い(阿川さんは食器用洗剤を薄めて使用)、タオルの畳み方など。細かく気になることはたくさんあって、最初は〝えっ!?〞て思うけど、〝この人はそっちが好きなんだ〞とわかれば、段々と〝またか……〞と思うようになっていってます(笑)」

人生には、何かあった時に、それを笑いに変える力が大事

──本書の最後を締めているのは、「品格と愛嬌のあるバアサンを目指す」という誓い。失敗を楽しみながら、そんな素敵な生き方をするために大切なこととは?

「何かあった時に、それを笑いに変える力なんじゃないでしょうか。全てがうまくいってしまったら、笑うためのネタもなくなってしまうでしょ。

例えば旅でも、楽しい旅にしたいという気持ちはもちろんあるけど、思わぬことが起こるから面白かったりする。日本で万全の準備をし、レストランも予約し、タイムスケジュールも決め、現地でその通りに動いたら、きっと無事に旅を終える。でも私は『で、だから?』みたいな気分になると思うんです。それよりも、転んでドレスが破れて購入したりとか、スリにあったけど素敵なお巡りさんに出会ったりする旅のほうが、後で思い出した時に面白い旅として記憶に残っているはずだから。

人生もまさにそうで、ずっと自分が傷つかない道を歩み続けて、静かに最期を迎えたのでは、死ぬ時に『で、だから?』という気持ちになるんじゃないかなって。それに、『酷ひ どい人生だったよー、あの人は』と笑って言われる人物のほうが、記憶にも残ると思うんですよね(笑)」

 

『バブルノタシナミ』
バブル期をキーワードに、女性の後半生に待つ、ワクワク・ドキドキ・ウキウキを語った痛快エッセイ。憧れの人生の先輩の言葉に、『OWN』読者の心のモヤモヤもスッキリ晴れるはず! バブル世代がメインターゲットの女性誌『GOLD』に連載されていた人気エッセイを一部加筆。1200円/世界文化社

PROFILE
阿川佐和子 Sawako Agawa
1953年、東京都生まれ。作家、エッセイスト。代表作『聞く力』(文藝春秋)は170万部のベストセラーに。近刊に『強父論』(文藝春秋)がある。『週刊文春』の人気対談連載は25年目に突入。トーク番組や討論バラエティ番組のレギュラーを長年務めるほか、映画やドラマでも活躍するなど、マルチな才能を発揮。

撮影/田中 雅(人物)、西山 航(本) インタビュー&文/神山典子 スタイリング/中村抽里 ヘア&メイク/大島知佳(reve)